アルミダイカストにおける材料リサイクル・再溶解について
今回はアルミダイカストの材料リサイクルと再溶解についてご紹介します。
アルミは再生可能な材料として広く知られています。
SDGs・LCAなどの言葉が浸透しているように現在、ものづくりには環境配慮が欠かせません。
今後ダイカスト部品の発注をご検討されているお客様はぜひご参考として頂ければと思います。
アルミの種類について
アルミインゴットには新塊と再生塊がありますが、具体的には『アルミ新地金』・『アルミ新塊合金』・『アルミ二次合金』に分類されます。
アルミ新地金
地中から掘り出したボーキサイトを原料にエネルギーを加えることで純度の高いアルミニウム
としたもので、中国・インド・ロシアなどで多く生産されています。
なお日本では生産されておらず、日本に存在する全てのアルミ新地金は輸入品となります。
日本で生産されていない要因として電気代が高すぎることが挙げられます。
アルミ新塊合金
純度の高いアルミ新地金に、必要となる金属(Si・Mg等)を添加したアルミニウム合金のことです。
アルミ二次合金
市中に発生したスクラップを主原料とし、必要に応じてアルミ新地金や添加金属を加えた
アルミニウム合金のことです。
また、国内で利用されているアルミニウムはほとんどがアルミ二次合金です。
弊社からお客様へ納入しているアルミ製品は100%リサイクル材から製造していると言えます。
そしてその製品もいずれ役目を終えると再びリサイクルされ、新たなアルミ二次合金として
生まれ変わります。
アルミのリサイクルについて
世の中に存在する金属はリサイクルしているものが多いですが、その中でもアルミは突出した
リサイクル率を誇ります。それはアルミニウムが錆びにくく、融点が低いという特性があるからです。
アルミニウムは酸化しやすい金属であるため錆びやすいように思われますが、あくまでそれは
アルミ『表面』の話です。
アルミ表面は空気中の酸素と反応し自然に酸化被膜を形成しており、この薄い被膜が内部への酸化を防ぎ錆びにくさに繋がっています。
①錆びにくい(=酸化しにくい)ため溶かしてもほとんど成分変化が無い・・・リサイクルしやすい
②融点が低いため溶かすエネルギー量が少ない・・・リサイクル費用が安価
以上のことからアルミの高いリサイクル率へと繋がっています。
アルミの再溶解とドロスについて
アルミダイカストメーカーは自社でアルミの溶解炉を保有しているため、自社内で製作した
鋳造後の製品、あるいは製品にならない方案部などはほぼ100%再溶解することで再利用が可能です。
当然、捨て打ちしたものや、不適合品なども再溶解が可能なため材料としては全く無駄になりません。
但し、再溶解時は溶湯が酸化して再生不能な酸化物が生成されることから歩留まりが100%とは
なりません。このように溶解時、溶湯の表面に浮かび上がるカスのことを『ドロス』といいます。
このドロスは60~80%程度はアルミニウムですが、酸化アルミニウム、窒化物、フッ素・塩素などの
ハロゲン化物が混在しており、水分と反応してアンモニアなどの有害ガスが発生することがあります。
アルミを分離し回収することで再びインゴットなどに再生することは可能ですが、ダイカストメーカー
ではスクラップ業者に回収してもらうことが一般的です。

再溶解しないもの
当然ではありますが異材との結合品や構成部品などが圧入され、取り外しができないものは再溶解が
できません。また、切削時に排出される切粉についても同様に再溶解をしません。
これは切粉に付着した油の除去が難しく、回収率も低いことが要因となっています。
前述のドロスや再溶解をしないもの、できないものはスクラップ業者に回収してもらっています。

リサイクルによる品質低下の懸念について
アルミは何度も繰り返しリサイクルされているため、バージン材に対し品質低下を懸念されるかも
しれません。ですがこれもアルミニウムの特性により解決されます。
アルミは、再溶解・再凝固の状態変化の過程で原子構造が大きく損なわれません。そのため何度リサイクルをしてもバージン材同等の品質が保たれる金属です。
但しMgなどの成分は酸化減少することから、必要に応じて添加をして成分調整をする必要があるため注意が必要です。
最後に
今回ご紹介の内容はダイカストメーカーの基礎で有り、ほんの一部の情報に過ぎません。
本サイトでは、ダイカスト部品のコストダウン事例の他、当社の強みや取り組みをご紹介しています。
ぜひ日々の仕事にお役立ていただくと共に、お気軽に田中精密工業にご相談頂ければと思います。