技術コラム

アルミダイカストにおける抜き勾配とスライドコアについて

抜き勾配は金型製品の製作上、必要となるものです。
本コラムでは抜き勾配について図を用いてわかりやすく説明致します。
また製品設計上、抜き勾配を無しとしたい場合もあるかと思いますが、その対処法もお伝えします。
今後ダイカスト部品の発注をご検討されているお客様はぜひご参考として頂ければと思います。

■抜き勾配とは

抜き勾配とは金型から製品を取り出すために必要となる勾配のことで、アルミダイカストだけではなく 金型を用いるもの、例えばプラスチックなどの樹脂製品にも必要なものです。

■スライドコアとは

金型開閉の際、内部でスライドし多様な部品形状の製作を手助けする部品のことです。



抜き勾配とスライドコアの説明のため、例として以下のような2つのグラス形状品を製作する場合を考えます。

A・Bともに似たような形状をしていますが、作り方・必要金型が大きく異なります。

まずAの勾配がついた形状は、以下のような固定型と可動型の単純な金型構想で製作することが可能です。

Bのストレート形状ではどうでしょうか。

先程のAの勾配がついた形状と同様の金型構想で製作しようとすると、製品が固定型とこすれてキズがつく、もしくは製品が固定型に貼り付き、取出しができなくなってしまいます。
抜け勾配はそのような不具合が起こらないために必要となります。


ではこのようなストレート形状製品を作る場合は、どのような構想になるでしょうか。


まずパーティングライン(割面)は以下のようにグラス形状品の中心となります。

但し可動型と固定型のみの型構想では空洞が作れないため、ただの円筒の塊となります。
また、抜き勾配の必要性から両端面のストレート形状は作れず、以下図のような形状となります。

そのため、この両端面にスライドコアを追加し、ストレート形状へと近づけます。

金型構想としては以下のような形状のスライドコアを追加し成型することとなります。

これにより勾配がついた形状に対し、Bのストレート形状の場合は追加のスライドコアが2つ必要ということがわかります。

そのため、金型で製作する場合の1ヶ当たりの単価は、Aの形状の方が安価ということとなります。


またBの形状に関しては、実は金型だけでは全く同じものを作るのが困難です。
理由はグラスの中身を鋳抜くスライドコアも、抜き勾配をつける必要があるためです。

一般的に抜き勾配はおおよそ1°の角度を必要とするため、グラスの高さを100mmとした場合、直径に対しグラスの中身の底は以下図のように3.5mm小さくなります。

当然高さが高いほどその影響は大きくなるため、穴明を必要とする製品を加工レスで作る場合、穴径の公差緩和が必要となります。
参考で下記のような一例を挙げます。

■最後に

今回ご紹介の内容はダイカストの基礎で有り、ほんの一部の情報に過ぎません。
本サイトでは、ダイカスト部品のコストダウン事例の他、当社の強みや取組をご紹介しています。
ぜひ日々の仕事にお役立ていただくと共に、お気軽に田中精密工業にご相談頂ければと思います。