技術コラム

アルミダイカストの鋳造温度と金型温度について

温度の種類

ダイカストに重要な『温度』は、主に『鋳造温度』『金型温度』の2つが挙げられます。

鋳造温度…保持温度で保持炉内の溶湯の温度のこと
金型温度…金型の温度のことを言い、一般的には入子の温度のこと

つまり『鋳造温度』は鋳造合金の溶湯温度のことを言い、『金型温度』は文字通り金型温度のことを言います。
なお、溶湯がキャビティに充填される直前の温度のことを『鋳込み温度』と呼びます。
また、ADC12のようなアルミニウム合金を例に取ると、一般的に鋳造温度は650~680℃、金型温度は150~250℃程度に保たれます。

温度設定による不具合

鋳造温度・金型温度は、高低によるメリット・デメリットがあります。ここでは主に問題点(デメリット)について説明します。

・鋳造温度が高い場合の問題点

鋳造温度が高くなると酸化の進行が進むため、酸化膜・酸化物がダイカスト製品内に混入することとなり、機械的性質の低下やハードスポットの原因になります。また、鋳造温度は金型に吸収される熱量と比例するため、金型寿命の低下に繋がります。

・鋳造温度が低い場合の問題点

鋳造温度が低すぎると、溶湯が射出スリーブ内で急冷され凝固し、破断チル層の発生に繋がります。
それにより製品強度低下の原因となり、同時に湯流れ性の低下が危惧されます。

・金型温度が高い場合の問題点

金型温度が高くなると、ライデンフロスト現象により金型表面に水蒸気膜が形成され、離型剤が金型表面に到達できなくなります。また、焼付きや溶損などが発生しやすくなるため、金型寿命の低下に繋がります。
※ライデンフロスト現象:高温に過熱された物体に液滴が滴下されると、液滴と物体との間で瞬間的に蒸発が始まり、液滴と物体との間に蒸気層が形成される。その蒸気層は液滴に対して熱を伝えにくくし、物体から液滴への熱移動がほとんどされず、液滴と物体が全く濡れなくなる現象。

・金型温度が低い場合の問題点

金型温度が低くなると、キャビティを流れる溶湯の温度が低下して、途中で凝固し湯じわや湯回り不良に繋がります。
また、水溶性の離型剤に含まれる水分が未蒸発となり金型内に残ることで、その後充填された溶湯と接した際に蒸気化、製品内に巻き込まれることで巻き込み巣発生の恐れがあります。

不具合の解決について

ここまで鋳造・金型温度が高すぎる場合、低すぎる場合に引き起こされ得る問題点を挙げましたが、逆に温度を低くしたり高くすることでその問題を解決できる可能性が有ります。
但しダイカストの鋳造条件には温度以外にも、鋳造圧力・ゲート速度・充填時間等品質に影響を与える重要な項目があるため、それぞれの不具合の原因を理解し、正しく対処していくことが最も重要となります。

最後に

今回ご紹介の内容はダイカストメーカーの基礎で有り、ほんの一部の情報に過ぎません。
田中精密では高精度のシュミレーション技術により、様々な不具合対策を設計段階で盛り込み量産に繋げております。
本サイトではそのような当社技術の他、強みやダイカスト部品のコストダウン事例などをご紹介しています。
ぜひ日々の仕事にお役立ていただくと共に、お気軽に田中精密工業にご相談頂ければと思います。